なくしもの
物にあまり執着しないタイプだ。
捨てることや手放すことに抵抗がない。
ダンボール3箱で引っ越しできる。
そんな私が執着しているもの。
小学生の時に書いた小説ノート。
小学5年生の私は小説家になりたかった。
漢字辞典を駆使して主人公の名前を考えた。
小さなノートに日々物語をしたためた。
絵が上手い友達に挿絵を描いてもらった。
教育実習生に感想を求めた。
小説は私にとって、
コミュニケーションの手段でもあったのだ。
初めて完結した小説。
いつのまにかなくしてしまった。
ふと思い出して後悔する。
しっかり保管しておけばよかった。
将来有名人になったらプレミアがついたのに。
しかし後悔ばかりではない。
挿絵を描いてくれた友達は美大生になり、
デジタルでイラストを描いてくれた。
なくしたことが今、文章のネタになった。
コミュニケーションの手段として、
小説はしっかり残っているのだ。
夏には教育実習に行く。
終